韓国の世論調査の方法や信ぴょう性の謎

📞日本のニュースやワイドショーなどで時々話題にあがる韓国の世論調査。支持率などの結果だけでなく、信頼性が気になる人も多いのではないでしょうか。

なるほどそうなんだーと信憑性を疑うことなく鵜呑みにしたり、ちゃんと調査しているのかな?もっと高いはずだ!操作していないか?と疑ったり、結果にまったく興味なし!など様々な考えがあるかと思います。

そんな韓国の世論調査がどのような方法で行われているのかを調べてみることにしました。

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世論調査とは

日韓で意味の違いはあるの?

韓国における世論調査について調べるにあたり、日韓で世論調査の意味が異なるかもしれないので、日本の「ウィキペディア」韓国の「ウィキ百科」というサイトとを比べてみます。

まず、日本のウィキペディアを見てみます。

世論調査(よろんちょうさ、せろんちょうさ)とは、ある社会集団の構成員について世論の動向を明らかにする目的で行われる統計的社会調査、またはその調査技法。

引用: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

なるほど、よくわかりました。次に、韓国のウィキ百科を日本語に訳してみます。

輿論調査とは、ある社会集団の構成員について輿論の動向を調べる目的で行う統計的社会調査、またはその調査技法。

引用:위키백과(ウィキ百科) 訳:コリメディア

なんと!それぞれの説明文を見比べると語句も語順もほとんど同じです。ウィキペディアって世界共通でしたっけ?こんなにそっくりなのかと少し混乱しています。同じ人が書いているのか?どちらかが参考にしたのか?意義が概ね一緒なのはわかりますがとても似ているので驚きです。

参照した原文はこれです。

여론조사(輿論調査)는 어느 사회집단의 구성원에 대해 여론의 동향을 알아보려는 목적으로 실시하는 통계적 사회조사, 또는 그 조사 기법을 말한다.

引用元:위키백과(ウィキ百科)

疑問は残りますが、推測はここまでにして、世論調査の意義の違いについての結論は?

世論調査の意義の認識について日韓では、ほとんど違いがないようです。

世論調査の韓国語の発音

日本語と韓国語の発音は、ときどきそっくりなものがありますが、世論調査の発音も「(輿論ヨロンチョサ」です。日本語とほとんど同じです。

世論と輿論

世論調査の意味は、日韓でほとんど同じなのに漢字が違うことに気が付きました。日本は世論ですが、韓国では輿論です。

気になったので検索してみたところ、韓国の山林庁のホームページには、輿論調査の意味として、次のように書かれているのを見つけました。

대중의 자유로운 의사를 알기 위하여 개별적인 면접이나 질문서를 보내거나 하여 자료를 모아 세론(セロン:世論)을 조사하는 일.

輿論調査とは
大衆の自由な意思を知るために、個別に面接したり質問書を送って資料を集め、セロン(世論)を調査すること

引用:https://www.forest.go.kr/ 訳:コリメディア

「世論を調査すること」と書いてあります。

他にも、いくつかの韓国語のホームページを見ると、微妙に世論輿論を使い分けています。

輿論調査は、単なる世論調査とは違う」とも書いてあります。

いったいどういうことでしょうか。

輿論と世論の違い

輿論について、次のような解説が見つかりました。日本のコトバンクから「輿論」の意味について引用します。日本でも大正期まで「輿論」と「世論」は、明確に分かれていたようです。

世論とは、世間一般の人の考え。
ある社会的問題について、多数の人々の議論による意見。せろん。
「―を喚起する」「―に訴える」→せろん(世論)
[補説]当用漢字制定以前は「よろん」は「輿論」と書いた
「世論」は「せろん・せいろん」と読んだ。
輿論(ヨロン)」は人々の議論または議論に基づいた意見
世論(セロン)」は世間一般の感情または国民の感情から出た意見
という意味合いの違いがある。

https://kotobank.jp/

韓国では、「輿論」と「世論」を、使い分け続けていて、日本では、漢字は「世論」に一本化し、発音は感情のセロンよりも議論を意味する「ヨロン」を使うことが多いようです。

漢字は違うものの、日本と韓国では世論調査の意義に大きな違いはないということでスルーして、世論調査の方法などを見ていきます。

このページでは「世論」の漢字を使うことにします。

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テレビ、ラジオで流れる世論調査の伝え方

韓国では、大統領選挙、総選挙、地方選挙における支持度や、大統領や政党の支持率が、報道機関を通じで公表されることがあります。

日本では報道機関の名前で調査している?

日本では、報道機関が世論調査結果を伝えるとき、調査自体は、別の会社に委託しているかもしれませんが

  • 読売新聞(新聞社)の世論調査
  • NHK(テレビ局)の世論調査
  • 産経新聞・FNNの合同世論調査
  • 共同通信社(通信社)の世論調査

など報道機関(自社)の名前を出すことが多いようです。

韓国では報道機関の名前で調査しないの?

韓国では、KBS(韓国放送公社)、YTN、聯合ニュースなどのニュース番組で世論調査の結果を発表するときに次のような説明をしています。

  • リアルメーターによると
  • ギャラップによると
  • YTNがリアルメーターに依頼した調査によると

リアルメーターギャラップ?いったい何のこと?と思うかもしれませんが、これらは世論調査を行う会社なんです。

世論調査会社としては

  • カンタコリア(칸타코리아)
  • 韓国リサーチ(한국리서치)
  • 韓国ギャラップ(한국갤럽)
  • リアルメーター(리얼미터)

などがよく知られています。

韓国では、報道機関が世論調査機関に調査を依頼するのが普通のようです。※報道機関が行うものもあります。

なお、リアルメータのホームページには、大統領支持率など、いくつかの世論調査の結果が掲載されています。興味のある人は「리얼미터」で検索して閲覧することができます。

韓国では、世論調査の条件をしっかり伝える

韓国では、世論調査の結果を伝えるときに、どんな条件で調査を行ったのかを細かく伝えています。

例えば次のような感じです。

○○新聞社가 여론조사기관 △△社에 의뢰해 실시한 이번 여론조사는 지난 7월 5일부터 6일까지 2일간 전국에 거주하는 만 18세 이상 남녀 1천6명을 대상으로 무선ARS(RDD) 방식으로 진행됐다. 응답률은 1.6%, 표본오차는 95% 신뢰수준에 ±3.09%p다. 통계보정은 2021년 5월말 행정안전부 주민등록인구 기준 성별·연령별·지역별 가중값(셀가중)을 적용했다. 기타 자세한 내용은 중앙선거여론조사심의위원회 홈페이지를 참조하면 된다.

引用:〇〇일보

日本語にすると

〇〇新聞社が、世論調査会社△△に依頼して実施した今回の世論調査は、7月5日から6日まで2日間、全国の居住している満18歳以上の男女1,600人を対象に無線ARS(RDD)方式で行いました。応答率は1.6%、標本誤差は95%、信頼水準は±3.09%ポイントです。統計補正は2021年5月末行政安全部の住民登録人口の基準で性別・年齢別・地域別の加重値を適用しました。その他、詳細の内容は中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参照してください。

です。この例ですと次の事項を読者に伝えています。

  • 調査会社
  • 調査期間
  • 対象年齢
  • 調査人数
  • 調査方式
  • 応答率
  • 誤差
  • 信頼水準
  • 補正
  • ホームページ参照の案内

新聞だけではなく、テレビでもラジオでもインターネットでもこのように世論調査を行った条件が細かく伝えられています。テレビ、ラジオでは、かなり早口ですが・・・・。

日本ではこんなに細かい説明はあまり聞いたことがない。あれ?韓国の世論調査って意外としっかり管理されているんじゃないの?

と思ってしまいます。

ところで、上の説明文の数値は実際に公表されていたものですが、応答率が1.6%と低いことに驚きです。韓国の世論調査の応答率の低さに注目して、「一部の人の意見しか吸い上げていないので信頼できない」と考える人もいるようです。

中央選挙世論調査審議委員会

選挙世論調査の結果が、メディアから伝えられるときに

「詳細の内容は中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参照してください」

というアナウンスをよく聞きます。

国の機関みたいなところが世論調査をやっているのかな?
ホームページに何が載っているのかな?

という程度に感じていただけで、今まで、何の機関なのか詳しく知りませんでした。

調べてみると、中央選挙世論調査審議委員会は、世論調査が適正に行われているかを審議し、違反の場合は必要な措置を行う機関のようです。

日本の世論調査とは、ずいぶん仕組みが違うようです。

中央選挙世論調査審議委員会のホームページ

世論調査のうち選挙に関するものを扱う中央選挙世論調査審議委員会のホームページです。

選挙世論調査に関する情報や「登録機関」、「世論調査の届出」、「違反形態」、「違反処分」の情報などが掲載され、誰もが、過去に行われた選挙世論調査の実施方法を個別に検索して閲覧することができます。

中央選挙世論調査審議委員会のホームページ
引用:https://www.nesdc.go.kr 一部、日本語訳を追加

詳しく知りたい方は、「중앙선거여론조사심의위원회」で検索すると閲覧できます。

選挙世論調査機関の登録状況

韓国にはたくさんのリサーチ会社がありますが、選挙の世論調査を実施する機関は、中央選挙世論調査審議委員会のホームページに登録をしなければなりません。

2021年7月の時点で、76の世論調査機関が登録を行っています。もちろんリアルメータもギャラップも入っています。

世論調査結果の公表

世論調査を行った状況・条件・抽出方法などが、本当に細かく掲載されています。

登録は、17項目とされていますが、さらに細分化されて掲載されています。報道機関が世論調査機関に調査を依頼していることもわかります。

およそ8,000件の選挙世論調査の実施状況が公表されています。本当に細かい事項を届け出る必要があり、また、それらが公表されているので驚きました。

違反事例の紹介

公職選挙法に違反する場合や選挙世論調査基準に違反する事例が書かれており、違反がないように注意が促されています。

違反処分の公表

2021年の違反処分が1件公表されています。

「中央審議委員会のホームページに登録していない選挙世論調査結果を公表したとして過怠料1500万ウォンを賦課する決定」とあります。結構厳しいですね。

中央選挙世論調査審議委員会のホームページの観察についてはこのくらいにしておきます。

中央選挙世論調査審議委員会の運営と世論調査の現状などについて、選挙管理委員会の動画で調べてみましたので、このページの後半に書くことにします。

韓国ではどのように世論調査が行われているのか? 

韓国では世論調査がどのように行われているのか、3つのポイントで説明している動画がありましたので、学んでみました。

3つのポイント

世論調査を知るために必要なポイントを次の3つだけに絞ってみます。

  1. 調査方法
  2. 標本誤差
  3. 回答率

調査方法

国民全体がどんな意見を持っているのかを知りたいとき、全ての人に聞きまわることはとても大変なことです。したがって、世論調査を通じて国民の意見を読み取っていきます。

例をあげます。
鍋料理で大きな鍋の中身の味を確認するときに、全部を味見するのではなくスプーン1杯をとって、全体の味を確かめると思いますが、世論調査も同じです。国民の全員から意見を聞くことができないので、一部の人たちを選んで質問するのです。

一部の人たちを抽出するときに公正に選ぶことが世論調査の命になります。

醤油を垂らしたときに、その部分だけを抜き取っても、しょっぱいだけで全体の味はわかりませんよね。しっかりと混ぜて混ぜて、味見をしなければなりません。

世論調査でもしっかりと標本から取り出さなければなりません。

どうやって取り出したらよいのでしょうか。

調査方法には、手段が2つ、方法が2つあります。これらを組み合わせると4種類の手段と方法になります。

2つの手段 有線と無線

📞世論調査を行うとき、かつては直接面接もありましたが、今は、ほとんどが電話です。電話には、有線と無線の2種類があります。

  • 有線は自宅の電話
  • 無線は携帯電話

手段はこの2つになります。

2つの方法

質問の方法は、次の2つです。

  • ARS方式(Automatic Response Systems:電話自動応答システム)
  • 電話面接方式(調査員が電話をかけて聞き取る)
4つの組み合わせ

2つの手段と方法を組み合わせると次の表のようになります。①~④のどこを抽出するかによって結果が変わってきます。

ARS方式電話面接
有線(架設)
無線(携帯)
手段と方法の4つの組み合わせ

有線と無線の違いですが、有線は自宅に設置した電話です。回答を得るには電話に出てもらう必要があります。被調査者が自宅にいる必要があります。在宅率が高いのは、仕事に出かけていない人や高齢者です。特に高齢者には保守系が多いので有線で調査すると保守系の意見が集まります。一方、携帯電話進歩の意見が集まる傾向にあります。

ARS方式電話面接
有線(架設)保守↑保守↑
無線(携帯)進歩↑進歩↑
保守系か進歩系か

次は応答率についてです。ARSでは、録音音声が質問をするので、忙しいときに調査を受けた場合など、切られる可能性が高く、応答率↓下がります。一方、他人からの問いかけに対して、韓国では小さいころから失礼なことをしないように教わってきているので、人からの電話を受けた時に、ガチャっと切れません。よって電話面接の場合は、応答率↑上がる傾向にあるそうです。

ARS方式電話面接
有線(架設)応答率↓応答率↑
無線(携帯)応答率↓応答率↑
世論調査の応答の傾向

ARSは、応答率が低いのですが、どうしても訴えたいという強い意見がある場合には、多少忙しくても積極的に答えようとし、正直な意見集まりやすくなります。一方、電話面接の場合は、面識がなくても相手が人であるため、候補者や政党、政策、意見など個人の考えを正直に伝えづらくなり、正直な意見反映されない可能性があります。

ARS方式電話面接
有線(架設)正直↑正直↓
無線(携帯)正直↑正直↓
正直な意見のくみ上げ

費用の面では、ARS方式のほうが安価であり数多く調査できます。調査費用は世論調査の結果に影響を及ぼす可能性があります。

ARS方式電話面接
有線(架設)
無線(携帯)
費用↓費用↑
世論調査の費用

世論調査の結果を見る場合、順位や数値だけで判断するのではなく、4つの組合わせ何をどのくらい抽出しているのかによって結果が異なることを知っておいたほうがよいと思います。

調査する時間帯

調査する時間帯にも注目したいところです。午前中は電話に出やすい保守の意見が多く、夕方以降は仕事を終えた進歩系の意見が集まりやすくなります。

設問数

設問数も結果に影響を与えます。AとBどちらが好きか。について

  1. Aが好き
  2. Bが好き

という2択では、どちらかを選ばなければなりませんが

  1. Aが好き
  2. Bが好き
  3. どちらも好きではない。

というように選択肢を3つに増やすことにより、AとBの好みの比率が変わります。

質問内容

「鍋焼きうどんと冷やし中華のどちらが食べたいか」と質問をするとき、「寒いとき」という条件を加えると「なべ焼きうどん」の回答が多くなると思います。このように質問に何らかの要素を加えることにより、答えの傾向が変わる可能性があるので、質問内容が公正であるかどうかを見ていくことも大切です。

標本誤差

国民の意見を集めるために、全体を調査することは難しいので、一部だけを拾い上げて、その一部から全体を推測しなければなりません。

どんなに公正に一部を選んでも、それが全体の結果と100%一致することは不可能に近いことです。

一部と全体の結果が全く違うのは論外ですが、世論調査では、ある程度の違いを前提に結果を出しています。それが標本誤差です。

±3%P の誤差というように表します。

Aが40%、Bが38%の支持の場合
Aは、37~43%の可能性があり
Bは、35~41%の可能性があるということです。

Aが37%のとき、 Bが38~41%であれば逆転となり、このような場合を「誤差範囲の接戦」と表現します。実際の勝利は予想できず、選挙当日に結果がわかることになります。

Aが40%、Bが30%の支持の場合は
Aは、37~43%の可能性があり
Bは、27~33%の可能性があるということです。

この場合、Aの最低37%をBの最高33%が上回れないので、Aが勝つ可能性が高いと言われます。

応答率

応答率は、どのくらい調査に参加したかの人数になります。

「成人男女2,000人を対象に実施、応答率が10%」と公表された場合は、

2,000人を調査して、200人が回答したのではなく、
20,000人を調査して、2,000人が回答したということになります。

応答率は、「最後まで答えた人/電話に出た人」です。

3つのポイントを知って世論調査に接する

世論調査は結果だけを見るのではなく、手段方法を含めた内容全体も見たほうがよく、その中でも、この3つのポイントを意識すると、より興味深く世論調査に接することができます。

--動画で学習した内容はここまで--

以上のような内容で、とても分かりやすいものでした。ここでもう一度、選挙世論調査結果の実施方法を見てみると理解が深まると思います。

〇〇新聞社が、世論調査会社△△に依頼して実施した今回の世論調査は、7月5日から6日まで2日間、全国の居住している満18歳以上の男女1,600人を対象に無線ARS(RDD)方式で行いました。応答率は1.6%、標本誤差は95%、信頼水準は±3.09%ポイントです。統計補正は2021年5月末行政安全部の住民登録人口の基準で性別・年齢別・地域別の加重値を適用しました。その他、詳細の内容は中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参照してください。

このポイントを意識して次の中央選挙世論調査審議委員会による解説動画を見たところ、さらに制度的なものがよくわかりましたので、これより下の節で紹介したいと思います。

中央選挙世論調査審議委員会による解説

中央選挙管理委員会が作成した動画で韓国の選挙世論調査について分かりやすく解説されていました。内容を整理してみようと、吹き出しを使って、私流に日本語にしてみました。日本語訳が正確でない可能性があるので、正しく知りたい方は公職選挙法の規定や中央選挙世論調査審議委員会の公表内容を参照してください。

それでは、選挙世論調査に関するQ&Aに移ります。

選挙世論調査について、いろいろと教えて頂きたいと思います。

まず、選挙世論調査は、いつごろから行われているのですか?

民主化以降の大統領選挙において、どのくらい票がとれるのか関心が集まり、13代大統領選挙の時に初めて世論調査が行われました。その後、地方選挙にも広がり2000年代以降に日常化しました。

※ 13代大統領 盧 泰愚氏 1988~

大統領選挙で大きな役割を果たしたとのことですが、
国会議員選挙でも行われていたのですか?

国会議員選挙でも行われています。結果を出すのがとても難しいのですが、1995年の地方選挙のときに、かなり高い的中率で国民の信頼を得ました。それで1996年の国会議員選挙で本格実施されることになりました。放送3社が共同世論調査を行ったので、世論調査の結果に対して、とても高い関心を得たんです。

このようにして民主化以降に世論調査が発展してきたんです。

今は、1週間ごとに世論調査結果が出たりもします。
世論調査を行う機関も多様化しており、調査のやり方の多様化が進んでいるようです。

高い質を確保していかなければなりませんね。
韓国には、選挙世論調査審議委員会がありますが、どんな役割を果たしているのですか?

選挙世論調査の客観性と信頼性を確保するために多様な役割を果たしています。

1 選挙世論調査が公職選挙法と選挙世論調査基準に違反しているかを審理し、違反の場合は必要な措置を行う。

2 選挙世論調査機関の登録を行う。

3 実施申告を受け付け、質問時審査を行う。

4 携帯電話の仮想番号の提供を行う。

5 関連制度、技法の開発改善を行う。

などです。

ちょっと休憩・・・・・・

バンドワゴン効果ってなに?

支持率が高い候補へ票を集めることです。
大多数の意見に従う心理によるものです。

アンダードッグ効果ってなに?

支持率が劣っている候補者に入れる同情票のことです。
弱者を応援する心理から生まれる行動です。

選挙世論調査は、さまざまな形で有権者に影響を与えます。

講義を再開します・・・・・・

選挙世論調査とはどういうものですか?

選挙に合わせて行うなど選挙と関連のある次のような世論調査を言います。
1 政党、候補者に対する支持度、認知度、当選予想
2 政党内の候補者争い、候補者の一本化に関する世論調査
3 政党、候補者が提示した選挙公約、政策に対する支持、反対などに関するもの
4 政党の名称、候補者の氏名を出して行う選挙公約、政策立案のための世論調査
5 予備候補の登録申請開始日から選挙日まで実施する議政活動の世論調査

選挙世論調査に該当しないものは?

1 政党内の役職を選ぶための世論調査
2 純粋な学術、研究目的の世論調査
3 団体の意思決定のための構成員に対する世論調査
4 政党の名称、候補者の氏名を出さずに実施する選挙公約、政策立案のための世論調査
5 予備候補者登録申請開始日前の議政活動の世論調査
6 国政の遂行に関する支持度

などです。

世論調査をする場合は、選挙に関するものか違うのかを区分しなければなりません。

選挙世論調査に実施者の資格はいるのですか?

誰でも調査ができます。
ただし、関係法令や規則を遵守しなければならないので、選挙世論調査に関する専門性が必要です。

また、公表目的の世論調査を行う場合は、管轄の審議委員会に選挙世論調査機関の登録をしなければなりません。

登録を行えば、公表目的の世論調査を実施することができます。

質問の内容に制限はあるのでしょうか?

特にありません。
支持度、好感度、政策立案、選挙公約など様々な内容の調査が可能です。ただし、偏向した質問、回答の誘導など有権者の意思を歪曲する方法はできません。

候補者や政党、政治家は選挙世論調査をどのように活用するのですか?

活用の用途は非常に多いんです。
例えば、候補者の立場では、出馬をしたいのだが、A地域とB地域のどちらで多く支持されているかなどの出馬地域の選択に使うことができます。
また、どのくらい票が集まるかなど、選挙の戦略を立てるのに活用することができます。

悪用される例はあるのですか?

とても多いんですよ。

党内候補者選びに利用する世論調査で、自分が依頼した選挙世論調査を準備する候補者がいるかもしれません。

そういう人は自分の支持率が80%だなどと宣伝して優位に立とうとする可能性があります。

また、公正に行った選挙世論調査だったとしても、特定の時期に行った世論調査だけを使うとか、バンドワゴン効果を狙った選挙世論調査の公表を行ったりする可能性があります。

公職選挙法では、選挙世論調査の実施方法が規定されています。
どのようなものなのですか。

公表用世論調査と非公表用世論調査で違いがあります。

『非公表用世論調査』は、管轄の審議委員会に世論調査の実施申請をし、選挙法に規定されている標本の代表性等を順守して実施します。

『公表用調査』は、

1 調査システム、分析専門人員などの登録要件を具備し、管轄の審議委員会に世論調査機関として登録する。
2 選挙世論調査開始日の2日前までに設問紙を含めて選挙世論調査の実施申請をする。
3 選挙世論調査基準を順守して実施する。
4 選挙世論調査が終了したら、基準に定められた17種類の項目と結果を合わせて中央選挙世論調査審議委員会のホームページに登録します。

なお、選挙日の6日前から実施する世論調査については、結果の公表と結果を引用した報道が禁止されています。

国民が普段から抱いている知りたいことなんですが、

どこで、だれが調査をしているのか?
なぜ自分のところに電話がこないのか?

わたしも、どのように調査しているのかを自分で体験したくて、待ち構えているのですが、なかなか来ないんです。

選挙世論調査の方法は?

電話調査とインターネット調査があります。

中央世論調査審議委員会のホームページに登録されている選挙世論調査の大部分は、携帯電話や有線電話などの電話調査です。

電話調査では
1 録音音声で質問するARS調査
2 人が質問する電話面接調査
があります。

電話番号はどのような経路で集めるのですか?

みなさんがいちばん気になるところですよね。

大部分は、選挙世論調査機関がランダムに作り出したものです。

携帯電話の仮想番号を利用したものも多いです。

仮想番号とは、移動通信社が保有している携帯電話番号を個人情報がわからないように変換したものです。

移動通信社が提供した仮想番号は中央選挙世論調査審議委員会のホームページで提供しています。

仮想番号は、2016年の大統領選のために最初に導入しました。2017年から公表用選挙世論調査に活用が可能になり、提供範囲が拡大しました。

ここでワンポイントレクチャーです。

選挙世論調査結果の登録事項17種類は、次のとおりです。

1 選挙世論調査の名称
2 調査依頼者
3 選挙世論調査機関
4 調査地域
5 調査日時
6 調査対象
7 調査方法
8 標本の大きさ
9 被調査者の選別方法
  (携帯電話仮想番号を使用した場合はその事実と使用比率)
10 被調査者の接触状況
  (不適格事例数は、電話番号の欠番とそれ以外(事業者だった、地域外だったなど)を分けて登録)
11 接触率
12 応答率
13 加重値の算出と適用方法
14 標本誤差
15 全体設問紙
16 結果分析
  (支持度結果はすべて登録する)
17 最初の公表・報道の予定日時

誤った選挙世論調査による被害事例についてです。

以前は新聞やニュースなどを通じて公表されていましたが、最近ではSNSや個人チャンネルで伝えられています。
YouTubeなどでも結果が伝えられています。

多様化する選挙世論調査を引用して話題にすることが多いのですが、誤った選挙世論調査が拡散した場合、さらに被害が大きくなってしまうと心配がありますが、選挙世論調査関係の違反事例はどのようなものがあるのですか?

3つの主体によって事例が異なります。

ーーーーーーーーーーーーー

<世論調査機関の違反事例>

1 調査結果の歪曲
2 選挙世論調査基準の未順守
3 ホームページへの結果登録時に実際と異なる登録

ーーーーーーーーーーーーー

<政党又は候補者の違反事例>

1 ホームページに未登録の選挙世論調査を公表
2 ホームページに登録した選挙世論調査の結果数値を歪曲して公表
3 党内候補者選びの調査時に性別、年齢をごまかして回答するよう依頼
4 数百台の電話を設置し、一人が複数回にわたり回答
5 非公開用世論調査で携帯電話の仮想番号の提供を受ける場合

ーーーーーーーーーーーーー

<マスコミまたは国民の違反事例>

1 引用、公表時、4種類の公表条件を未順守
2 インターネットを通じて自発的参加者を対象に調査を実施する場合は、代表性がないために選挙法に違反します。

誤った方法で実施した場合に罰則はあるのですか?

意図的に歪曲、捏造した場合は、刑法上の処罰が可能です。

世論調査基準に違反した場合は過怠料を求めることができます。

誤った選挙世論調査の被害の救済は?

選挙世論調査結果の客観性や信頼性に異議がある場合は
管轄の世論調査審議委員会に異議申請をすることができます。

選挙世論調査に関するマスコミの報道で被害を受けた場合は
反論報道を要求することが可能です。

放送の場合は、選挙放送審議委員会、
新聞の場合は、言論仲裁委員会、選挙記事審議委員会、
インターネットの場合は、インターネット選挙報道審議委員会
に反論報道を申請することができます。

一般有権者の立場では、選挙世論調査が間違っているかどうかを判断することが難しいのですが、誤っている選挙世論調査をどのように選別すればいいのでしょうか。

ある調査結果が出たときに、信じるべきか否かについては、
1 中央選挙世論調査審議委員会への登録の有無を確認してみるとよいでしょう。基本的データのみですが、必要事項が具備されているので確認ができます。
ただ、その登録自体が信頼できるかというとそうではないので注意が必要です。
2 調査機関に対する情報の確認
3 公表の時期の確認
4 回答率などの公表要件の確認

などを総合的にチェックする必要があります。チェックする部分が多いのですが、全体的には、結果を見極める市民の成熟度が必要となります。

選挙世論調査は専門的な領域に感じます。専門用語も難しいです。私たちが選挙世論調査のリテラシーを高めるにはどうしたらよいですか。

中央選挙世論調査審議委員会のホームページを見てもらえれば、選挙世論調査のガイドブックが掲載されています。

選挙世論調査の白書、研究資料などもあります。

これらを参考にして、疑わしい点があれば、専用電話番号に提報することができます。

選挙世論調査の気になる点について、〇×方式で確認してきたいと思います。

合法的に行ったとしても、政党や候補者は自身が行った選挙世論調査を公表してはならない。

〇です。

公表してはいけません。選挙法には、政党や候補者が行った選挙世論調査を公表してはならない。という規定があります。選挙管理員会が告発したり、検察が起訴した選挙世論調査も公表できません。さらに、未登録の調査機関が行った選挙世論調査も公表禁止です。非公表用として戦略、情勢分析用としてのみです。

政党、放送、新聞が選挙世論調査を行うときは、
選挙世論調査の実施申請をしなくてもよい。

〇です。

申請しなくてもよいです。一般的には、公表用、非公表用とも実施申告をするのが原則。ただし、公職選挙法の第108条の3によると「政党、放送、市道単位以上の新聞は、選挙世論調査の実施申告をしなくても選挙世論調査ができる」と規定されています。

選挙世論調査の実施申告をして、実施した世論調査は全て中央選挙世論調査審議委員会のホームーページに結果を登録しなければならない。

× 違います。

公表用と非公表用に分けられるが、公表用調査だけ登録することとされており、非公表用の調査を登録すると選挙法違反になります。

標本数が多いほうが信頼できる。

×です。

標本は1,000人程度あれば十分です。信頼に重要なのは、調査方法、日程、応答率、標本誤差です。

バンドワゴン効果は、アンダードッグ効果よりも大きい。

×です。

バンドワゴン効果は、勝ち馬にのること、アンダードッグ効果は同情票を与えることですが、これらはケースバイケースです。

大統領選挙時に的中率が高かった調査機関は総選挙でも的中率が高い。

×です。

大統領選よりも総選挙の世論調査のほうが難しいのです。総選挙は地域がたくさんあります。小さな地域では標本抽出がとても難しい。総選挙のほうが相対的に的中率が下がるので、大統領選挙時の的中率の高さが他の調査でも維持できるとは限りません。

最後に伺います。正しい選挙世論調査のために必要なことは?

1 世論調査機関に対する公正な管理
2 仮想番号の使用範囲の拡大
 仮想番号を使用できる制度的な仕組みが必要
3 調査を受けた際は、電話を切らずに誠実に答えること

選挙法や選挙世論調査基準を順守することです。

選挙世論調査基準は最低限のことを定めているので、基準を守るだけでよいというよりも、調査機関自らが信頼性を高める努力をしてほしいです。

技法の研究と倫理意識の高揚も必要です。

候補者が留意することは新聞、放送、インターネットなどで世論調査に接したら度を越した解釈をせずに、参考資料として活用するとよいでしょう。

世論調査は、調査方法や時期、質問の内容によって結果が異なります。
中央選挙世論調査審議委員会のホームページに掲載された調査方法、質問の内容を参考とし、活用すると活動の助けになります。

そして、もし、選挙世論調査の電話が来たら、積極的に協力してください。
有権者の意思が、そのまま反映される良質な選挙世論調査が、増えていくと考えています。

候補者や政党は、正々堂々と、有権者は賢明に自身の管理をされることを願います。

まとめ

これから大統領選挙の時期を迎え、日本のニュースでも気になる話題として韓国の選挙世論調査の結果などが報じられることが増えると思います。韓国の世論調査は、的中率が低いなどと言われた時期があったり、不公正な使用があったりしたそうですが、それらを克服しようと制度作りを進めているようです。今まで少し気になっていた韓国の世論調査について、ほんの少しですが、知ることができたので良かったと思います。

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