外国語の多読
外国語を習得するために色々な勉強方法があります。そのうちの一つに多読があります。外国語をたくさん読んで身につけるというものです。外国語学習では、基礎的な文法も大事です。聞くことも、話すことも大切ですが、目を使って読んでイメージして脳に伝える多読も学習の効果があるようです。
多読の場合は、単語や表現をしっかりとキャッチできるので学習効率が高い気がします。良い本と出合えると外国語で読んでいることを忘れて内容に吸い込まれていきます。
英語の多読教材
英語の場合、多読するのにとても良い教材(Graded Readers)があります。単語などの習熟レベルに応じて準備された教材です。
「Oxford Bookworms Library」というシリーズを例にとると、まず簡単なレベルからスタートすると、Starterというステージの本を読みます。
- 語彙数250、総語数約1000語、簡単な表現のみで作られた本を1冊読みます。
- 同レベルの本を20冊程度読んで慣らします。
- 次にステージ1の語彙数400、総語数約5000語、少しレベルアップした表現で作られた本を20冊程度読みます。
- 今度はステージ2の語彙数400、総語数約5000語、レベル1よりも少し難しい表現の本をまた20冊読みます。
というようにレベルアップしていくものです。ステージは6まであります。やり遂げたころには100冊以上読んでいて、英語も上達しています。
辞書を引かなくても読み進めていけるという特徴があるようですが、迷ったときは辞書で補うこともできます。
最初のうちは、簡単な250単語だけだとしても、その少ない単語だけでしっかりと小説などが作られているので読みごたえがあります。政治、社会、スポーツなどいろいろなジャンルの本が作られていて、読んでいて楽しいものです。
英語のGraded Readers
英語のGraded Readersには次のようなものがあります。
- Penguin Readers
- Oxford Bookworms
- ラダーシリーズ
- Macmillan Guided Readers(日本市場から撤退)
書店やインターネットで購入することができます。高校、大学や公立の図書館にも置かれている場合があるので、ラッキーな環境にいる人はお金をかけずに勉強することができます。
Oxford Bookworms
英語のGraded Readersの種類の中で、個人的に好みなのがOxford Bookwormsです。書かれている内容が興味深いものが多く、文章も読みやすい感じがします。
ピアノを習っている子供たちが、気に入っている1冊が「The Piano」です。Stage2(見出語700語)ですので中学生であれば読めると思います。英語学習を早めに始めた子供であれば小学生のうちに読めてしまいます。(1ページ目の1文目が少し難しいかも)
ピアノといえば
ピアノといえば、韓国ドラマ「ピアノ(피아노)」を思い出す方がいるかもしれません。
およそ20年前のSBSドラマで、チョ・インソン(조인성)、キム・ハヌル (김하늘)主演でした。
先日、アカデミー賞で助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン(윤여정)さん、あちらこちらで見かけますが、当時出演していたのは「ピアノ」ではなく、KBSの「コッチ」でした。
韓国語版のGraded Readers
韓国語にもGraded Readersのようなものがあればいいなと探してみたのですが、国内の書店では今のところ見つけることができません。図書館などにも、韓国語学習に適した韓国書籍があまり置かれていないようです。
- 「冬のソナタ」で始める韓国語
- 「オールインワン」で始める韓国語
- 「美しき日々」で始める韓国語
などが多読テキストになるかもしれませんが、Graded Readersのようにレベルに合わせた勉強をすすめることができません。
韓国語を多読する方法
日本国内で韓国書籍に接する機会が少なく多読学習がしにくい環境ですが、いくつかの候補を挙げてみます。
日本の書店で購入
新宿周辺に生活圏が及ぶ方であれば、紀伊國屋書店新宿本店で韓国の教保文庫と提携しており韓国書籍を取り揃えているようです。
【新宿本店】 韓国語書籍、始めます!(2018年11月22日)
https://www.kinokuniya.co.jp/
韓国最大規模の小売書店チェーン・株式会社教保文庫との業務提携の一環として同社から韓国書を仕入れ、11月22日(木)より新宿本店にて店頭販売を開始します。
韓国の書店で購入
- 旅行や仕事で韓国に訪問したときに購入する
- 友人知人にお願いする
以上のような入手方法がありますが、新型コロナの影響で海外渡航が制限されている状態では難しい手段です。海外渡航ができるようになったら選択肢にいれることができます。
インターネットで注文する
インターネットで注文することができますが、次のようなデメリットがあります。
- 割高である
- 到着が遅い
インターネットで注文したことがありますが、インターネットサービスで配送状況を確認していると船便でプサン周辺から博多あたりを経由して、日本国内に配送されるようで、届くまでに時間がかかりました。送料込みのためか、実際の書籍の販売価格よりもかなり高価になりました。
10年以上前には週刊朝鮮という韓国の週刊誌をインターネットで契約し、定期購読したことがありました。朝鮮日報日本支社から週刊誌が毎週配達されるものでした。毎月の購読料が7,000円程度でした。今ではそのサービスも廃止のようです。
電子書籍
最近では、電子書籍を購入することができ、次のような店舗でサービスを受けることができます。
- YES24
- RIDIBOOKS
- 教保文庫(교보문고)
Kindleでは、韓国語のテキストしか見つからなかったので候補から外しました。
1冊のみ購入のほか定額購読もできるようです。
YES24では無料で閲覧できる本や最初の数十ページだけ無料で閲覧のものがあるので、韓国語に接したいという目的であれば、良い素材になります。他の2候補のサービスは試したことがありませんので無料サービスがあるかどうかについては、今後調べてみます。
WEBサイト
WEBサイトでは、いろいろなジャンルの韓国語に接することができます。
- 報道機関のサイト
サイトに組み込まれているニュース動画などは、アナウンサーやレポーターの原稿が文字起こしされているサイトもあるので、その原稿を利用すれば音声と一緒に多読することができます。 - 政府・行政機関のサイト
このジャンルの語学の勉強をしたいのであれば、参考になるかもしれません。 - 各企業のサイト
気になる製品に関する情報や会社の方針、コラムなどを多読することができます。 - NEVER、Daum、NATE、MSNなどの総合ポータルサイト
幅広いジャンルの多読ができます。
書き込みコーナなどでは、スラングなどに接することができます。
ドラマになった유미의 세포들(YUMI’s CELLS:ユミの細胞たち)のような短いウェブトゥーンも気軽に読めます。 - NEVER、Daumなどに掲載されている個人ブログ
韓国人の個人ブログは、googleやbing等で検索しても見つけにくいのですが、NEVER、Daumなど韓国のポータルサイトを開いて、検索窓に調べたい韓国語を入力すると色々と出てきます。口語表現や独自の言い回しなどをブログの投稿写真を見ながら学ぶことができます。旅行に行く前にお店や商品のことを知りたい場合などにブログの情報は役に立ちます。
YouTube
韓国人が作成したYouTubeでは、韓国語の字幕が入っている動画が多数アップロードされています。
字幕を見ていれば、多読になります。話している内容の字幕なのでヒヤリングの練習にもなりますよね。
注意点としては、人工知能のストリーミングの字幕はあてにならないので、作者が韓国語の字幕を埋め込んでくれている動画を探すとよいでしょう。
日本国内の表示
日本国内の公共機関のサービスではハングル文字の表示が多くなりました。ハングルの表示に注目してみるのも良いかもしれません。駅や電車内の電光掲示板でも周期的に切り替わりハングルが表示されたりもします。ハングルが読める些細なメリットとしては、掲示板を見た瞬間にハングルで表示されていても理解できるので、日本語の表示に切り替わるまで待たなくて良くなります。
公共機関などが作成した外国人向けのパンフレット、公共サービス案内、観光ガイドなどでも多読できます。ただし、利用目的が異なるのでパンフレットの持ち帰りなどには気遣いを!
韓国人が日本語を学ぶためのGraded Readers
この記事を書いている途中、そういえばと思い自宅の本棚を見たところ、なんと韓国人が日本語を勉強するためのGraded Readersを見つけました。
다락원 の『사다리 일본어』というシリーズです。
表紙には、사다리(梯子)のアイコンがついています。
いちねんせいの教科書選~よねんせいの教科書選の4冊が出ています。
その他にも16冊の日本の小説が出ています。
日本の小学校の教科書で日本語を学ぶものです。見開きの左側が日本語、右側が韓国語で単語や表現の解説が書かれています。1年生では25のタイトル131ページ、4年生では11タイトル125ページです。1年生から4年生まで順に難しくなっているので、まさにGraded Readersで、梯子のアイコンもそれを表現しているのでしょう。
表紙のデザインは、「日の丸」ではないかと思います。
「일본어 문화사(日本語文化社)」という出版社の本を多数見つけましたが、こちらは日本語で書かれた世界の小説を集めただけなので、Graded Readersにはならないかもしれません。
20年前の日本と韓国
『사다리 일본어』には【BooksLiBRO 4500원】の値札が貼られています。とても安いです。
乙支路のBooksLiBROで購入したと記憶しています。
これらの本は、韓流ブームが来る前にソウルで購入した本です。当時は、日本国内で手に入れることができる韓国語のテキストは数えるほどでした。そのため日韓対訳になっているこれらの本を購入したのだと思います。
この乙支路の書店では、日本語学習に関するコーナーが充実していてたくさんの日本語学習用のテキストが置かれていました。日本語用Graded Readersが売られるほど。
多くの韓国人が日本に興味を持っていた時代だったのでしょう。
最近の韓国のメディアからは、日本の成長、人口、物価等いくつかの面で20年以上停滞が続いているというような話題が時々聞こえてきます。日本の良い面から何かを学ぶ気運か落ちており、日本の失敗から何かを学ぼうとしているようです。
一方、日本の書店では、韓流ブーム以降はたくさんの韓国語テキストが置かれるようになりました。
それぞれの国の書店に置かれた語学テキストの状況をみると、両国の関係の一部が見えてきます。